静岡県三島市にある、三島少年少女合唱隊による初めての委嘱作品で、湯山昭作曲、関根栄一作詞による伊豆を題材にした全5曲からなる合唱組曲。

「雉、わさび田、猪譚、いちごたちよ、鮎の歌」からなる。1972年9月16日、三島市公会堂にて初演。指揮:湯山昭・ピアノ:紺野れいこ・演奏:三島少年少女合唱隊。同年10月には東京にて湯山昭の奥方である朝倉慶子先生の主催する「こどもの国合唱団」の共演で東京初演。

2012年、ウィーンにて行われた「湯山昭の世界」にて、演奏された。

鮎の歌は次の5曲からできています。

「雉(きじ)」

この曲は今日ではあまり取り上げられることが多くはありませんが、音楽的に言えばかなり高度な技術が要求される名作と言っても過言ではありません。早いテンポでグイグイ引っ張られて、また歌詞も「熊笹、葛…歩け走れ…キジ!」と今にも飛び立ちそうな雉の存在感が視覚的にも印象的です。

「わさび田」

伊豆、天城の名産であるわさびを題材に叙情豊かに歌い上げた曲。栽培されている「わさび」というものを初めて目の当たりにしてその澄み切った水と空気に感動した事、また花の姿が「白い十字の花」であることに驚いたという話。そのワサビ田を経営しているご主人の印象がまるで少年のようだったので、それが歌詞に反映されています。

「猪譚(いのししものがたり)」

文字通り猪突猛進するイノシシのイメージぴったりの曲です。伊豆の湯ヶ島というところに「イノシシ村」という観光名所がありましたが、普段は大人しいイノシシが、何かの拍子に豹変する場面にでも出くわしたのでしょうか?音楽で動物も表現出来ることを改めて教えられたようです。

最後の叫びのような「あらじしだあ!」という箇所が難しかったことを思い出します。

「いちごたちよ」

伊豆半島入口の韮山、江間周辺で見られるイチゴハウスの様子を描いています。三拍子の楽しい曲です。如何にもイチゴたちの「笑い声」が聴こえてくるような。それまではビニール栽培という言葉すら珍しかったのではないでしょうか?整然と美しく栽培されたイチゴたちへの讃歌。

「鮎の歌」

この曲集の題名ともなりました。

♫川の流れは歌う 夜明けの歌を 川沿いの街 霧に濡れてる山の街

湯山氏の美しいメロディーと関根氏の叙情性が見事に融合して、静かに語りかけてきます。

♫狩野川の本流に注ぐ流れは ねっこ日野沢 船原 そしてにのこや皆沢よしな 修善寺口の桂川

一転して川に焦点が移りますす。狩野川の支流の水の流れが様々なところを通り抜け、本流に合流していく姿が目の前で展開されていきます。まるでそこにいるかのような錯覚を覚えることでしょう。

♫川石の青 新しい 水垢求めて きらめく太刀 鮎 あゆ 夏

視点は更に水の中へと移り、藻の生えた石、そしてついに鮎の姿を捉えます。必死に川を遡る姿こそが「きらめく太刀」であり、夏の生命力それ自体なのだと。そしてついに、鮎の姿を捉えます。

♫早い瀬を 深い淵を 川を上ることだけが 川を上ることだけが 鮎 あゆの命