先日、鏡花の2作品を録音いたしました。言葉など、併記の原文を目でお読みいただきながらお聴きいただくのがいいかと思います。着物の具合など、今の私たちには耳で聞いただけでは想像がつきかねるところがありますので。
どちらも男性と女性のほのかな思慕が隠された物語になっています。「外科室」の方は植物園で一眼見ただけ。口も聞いてはいないのです。それが命をかけた恋になっていく。その前では夫も子供も意味を成さないほどの。そして前途有望の青年は惜しげもなく命を捨てるのです。
「女客」も話が昔語におよび、やっと二人の隠された恋が露わになりそうになった時・・・。子供の一言が二人の恋を阻みます。
2作とも、成就しない恋の物語です。でも、そこに現れた女性のなんという強さか!男の思いを受け止める以上の女性の思い。それは家族の絆も義理も軽く踏み越えて見せます。でも「女客」の方ではそれを引き止めるのが「母性」です。夫への義理やしがらみではありません。
女性の激しい恋と母性。それが鏡花の作品を貫くテーマです。初期作「外科室」ではついに踏み躙られた「母性」がこれから鏡花の作品の中でどのように開花していくか。私もそれを楽しみつつ鏡花朗読を続けていきたいと思います。皆様、お手数ながらお付き合いいただければ幸いです。
ここで出てくる作品の録音は
「外科室」(https://nihongo.voce.gr.jp/?p=1034)
「女客」(https://nihongo.voce.gr.jp/?p=1093)
は、こちらでお聴きいただけます。
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