「シブいビル」 鈴木伸子 河出文庫
私、実は「建築」好きなのです。「羊羹」とか「古いビル」とか好きで、みに行ったりもしています。でも、そんな私の盲点!この本は「昭和のビル」の美しさを教えてくれる本です。
建築を見る、というと、洋館とか戦前のデコラティブなビル建築などを目的に見ていました。でも、この本を読むと「みる」なんて考えずに、通りがかったビルがあれもこれも出ているではありませんか。そしてそのビルの壁の、インテリアの細部の美しいこと!まさしく「盲点」でした。有楽町の交通会館とか、ホテルニューオータニとか、果ては中野のブロードウェイまで。
間に合えば、帝国劇場も出ていたでしょうに。そして、1970年台の建築家たちのなんと優れていたことか。気がつかなくてごめんなさい!
有楽町の交通会館などにあった大きな石材モザイクは矢橋六郎の作。石材会社の社長だったこの人の石の大きなモザイクは他にもいくつか残っています。今、ビルが解体されたら、この美しいモザイクはどうなってしまうのでしょうか。このように人知れず解体されて失われていったビルのインテリア、部材などは数知れないと思います。そして今もあちこちの街でこのような取り返しがつかない事態が進んでいるのでhないでしょうか。
古いビルはそれなりに保存がはかられます。でも、このような近い昔のビルは「保存」や「文化財」の網もかかりません。思いのこもったこれらのビルを楽しく「見る」目を養い、大切に使い、解体の時には保存を図ることができないか、探っていくべき時なのだと思います。
そんな新しい「美」に目を開かせてくれたこの本に感謝します。
田中洋子 (日本語WAIWAIワークショップ 主任講師)

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